映画を…「天国と地獄」

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社会派サスペンス‐『天国と地獄』

  54年前の作品、高度経済成長期に向かう横浜を舞台に、
  黒沢組30周年として制作された。

本日の出席者一同
・日 時:
     2017(H29)年10月12日(木)9:30 〜12:30
・会 場:  こうのすシネマ
   (エルミこうのす アネックスビル 3階・4階)
・作 品:黒澤 明監督作品 /1963年(昭和 38年)
                                             モノクロ / 143分
・参加者:10名
・昼 食:  エルミこうのす アネックスビル 2階、
                                                「サイゼリヤ」

 「子どもを誘拐した。明日中に3,000万円を用意しろ」。会社重役の権藤(三船敏郎)にかかってきた 
1本の電話。製靴会社常務の彼は、お客様にとって良い製品をと、さらなる拡大を考えていた。犯人の要求にこたえるべきか、悩む。
 しかし、要求を受け入れたところから、誘拐犯と県警特捜班の頭脳戦が展開される。2時間23分の映画だが、私自身主人公 権藤になったつもりで、ぐいぐいと引き込まれていった。
 特急の車内、「次の鉄橋で子どもを見せる。渡ったら、鞄を投げろ」、窓の開かぬ特急で洗面所だけが7センチ開く。  ― 緊張の連続 ―
 若い男(山崎 努)が、アパートで新聞を確認。誘拐の文字が躍っている。これ以降、知能犯と渡り合う刑事たち。
 大学病院のインターンの若い男にとっては、丘の上の「見上げる権藤邸は天国に見えた」のだろう。高度経済成長の光と闇が見え隠れする映画であった。 
       (報告:瀬山宏昭、写真:熊谷康夫)                           




昼食風景-1


昼食風景-2

< 出席者から寄せられた感想 >(到着順)
    武井 章(専科3期、北本市 西高尾)
 子どもの誘拐事件で、犯人と警察の頭脳戦が繰り広げられたが、その冒頭に会社重役の権藤が経営方針の相違から社長派に追われそうになり、一発逆転を計画して5,000万円を工面した直後に、「子どもを誘拐した。3,000万円を用意しろ!」という電話がかかってきた。会社乗っ取り事件の危機的状況を絡めながら、冒頭の場面が展開された。 
 会社重役に若かりし頃の「三船敏郎」、警察の捜査リーダーに「仲代達矢」、犯人のインターンに「山崎努」が出演し、半世紀前の社会環境を懐かしく思い出した。誘拐犯の動機について詳細は語られていないが、格差社会の「格差」が根幹にあり、今に通じると思った。

    大島かよ子(専攻課程2期 火曜、北本市 本宿)                       
 上映時間は143分。前半の権藤(三船敏郎)邸の映像が1時間近くあった。ちょっと長く、しばし睡魔に襲われた(笑い)。でも、後半の展開が、身代金受け渡しの列車シーンから刑事が誘拐犯人を逮捕するまでのスピード感と描写にどんどん引きつけられ、最後までスクリーンに釘付けになってしまった。黒澤明監督の映画の構成(前半も含め)、描写、映像の展開などなど、観客を魅了させる素晴らしいサスペンス映画であった。
 
 
     野本英夫(専攻課程2期 火曜、久喜市 外野)
「キングの身代金」(エド・マクベイン)の原作を、4人のシナリオライターが箱根の旅館に1ヶ月缶詰になって練り上げた、見応え十分のサスペンス。
 主人公の三船敏郎が株主総会を控え、「やっと作りたい靴が作れる」と喜んでいると、そこに掛かってくる子ども誘拐の電話。だが、さらわれたのは自分の子ではなく、一緒に遊んでいた運転手の子ども。それから、自分の将来か、運転手の子どもの命か、を天秤に掛けて悩み抜く。渡すのか、渡さないのか。その間をテンポ良く、三船邸だけの室内劇として描く。
 これ以上はないタイミングで犯人からの電話があり、身代金を渡すまでが前半のハイライト。
 子供を無事に保護してから、犯人逮捕が後半部分。後半は意見の分かれるところである。仲代達矢が犯人逮捕時に「これでお前は死刑だ」のセリフが、それを端的に表しているのではないか?犯人をより重い刑に服させるために犯人を泳がせ、結果として新たな殺人を引き起こす。こういう少しやり過ぎのところが、もしかすると黒澤明らしきなのか?

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